徹底解説!「野球肩の教科書」

※この記事は約12分で読めます。

「ボールを投げると肩が痛い」「全力で投げられない」野球選手にとって、肩の痛みは選手生命に関わる深刻な悩みです。いわゆる野球肩(Baseball Shoulder)は、放置すれば慢性化し、最悪の場合は手術が必要になることもあります。

しかし、正しい知識と適切な初期対応、そしてフォームの改善を行えば、以前よりも強い球を投げられる状態で復帰することも可能です。

この記事では、野球肘とともに苦しむ選手が多い野球肩の基礎知識から、自分でできるセルフチェック、具体的なリハビリ方法、そして再発を防ぐための投球フォームのポイントまでを網羅的に解説します。
並行して【東海市の野球肘の治療事例】【知多市で野球肘の徹底解説】の記事を読んでいただくと肘の痛みまで網羅できます。

目次

野球肩とは?(基礎知識と種類)

「野球肩」とは単一の病名ではなく、投球動作によって引き起こされる肩関節障害の総称です。年齢や痛む場所によって、具体的には以下のような診断名がつきます。

インピンジメント症候群(Impingement Syndrome)

投球の動作中(特にテイクバックからリリースにかけて)、肩峰(肩の骨の尖った部分と腱板(肩の腱)が衝突(インピンジメント)して炎症や損傷を起こす症状です。

  • 特徴: 肩をあげたり、捻ったりすると鋭い痛みがある。

腱板損傷(Rotator Cuff Tear)

肩のインナーマッスルである「回旋筋腱板(ローテーターカフ)」が、使いすぎや外傷によって傷ついたり断裂したりする状態です。

  • 特徴: 力が入らない、夜間に痛む(夜間痛)ことがある。

リトルリーグショルダー(上腕骨近位骨端線離開)

成長期の選手(小・中学生)特有の障害です。骨の端にある成長軟骨(骨端線)が、投球の牽引力やねじれによって傷つき、開いてしまう状態です。

  • 特徴: 投球時だけでなく、圧痛(押すと痛い)がある。放置すると骨の成長障害につながるため、速やかな投球禁止が必要。

関節唇損傷(SLAP損傷など)

肩の受け皿となる関節窩の縁にある関節唇(関節の軟骨)が剥がれたり裂けたりする怪我です。

  • 特徴:投球のリリース時やフォロースルーで「カクっ」という引っかかり感や痛みを伴うことが多いです。

野球肩の「セルフチェックリスト」

病院に行く前に、まずは自分の状態を把握しましょう。以下の症状に当てはまる場合は、すでに炎症が起きている可能性が高いです。

  • 痛みチェック:
    • 腕を真横から上げていくと、特定の角度(60°〜120°付近)で痛む。
    • 投球の「テイクバック(振りかぶり)」の瞬間に痛む。
    • ボールをリリースした直後に肩の後ろや奥が痛む。
    • 練習後、夜寝ている時に肩がズキズキ痛む(夜間痛)。
  • 可動域・機能チェック:
    • 気をつけの姿勢から、痛い方の腕が耳につくまで真っ直ぐ上がらない。
    • 健側(痛くない方)と比べて、肩の内旋(内側に捻る動き)に行きにくい。

注意: 「夜間痛」や「安静時の痛み」がある場合は、重度の炎症や組織損傷の可能性があります。

野球肩になる3つの主要原因

なぜ野球肩になってしまうのでしょうか?単なる「投げすぎ」だけが原因ではありません。主に以下の3つの要素が複合的に絡み合っています。

オーバーユース(使いすぎ)

もっとも基本的な原因です。筋肉や腱の回復スピードを超えて投球を続けることで、組織が悲鳴を上げます。特に成長期は骨が未発達なため、球数制限(ガイドライン)を守ることが不可欠です。

コンディショニング不足(柔軟性・筋力)

肩そのものよりも、「股関節」や「胸郭(胸周りの骨格)」の硬さが主犯であるケースが非常に多いです。

  • 股関節が硬い: 下半身の力を上半身に伝えられず、手投げになる。
  • 肩甲骨が動かない: テイクバックで無理に肩関節だけで腕を引いてしまう。

不良な投球フォーム(メカニクス)

体に負担のかかる投げ方を続けている場合です。

  • 肘下がり(Elbow Drop): 肘が肩のラインより下がった状態で投げると、関節に過度なねじれのストレスがかかります。
  • 手投げ: 体幹の回転を使わず、腕の振りだけで投げようとする動作。
  • アーム投げ: 腕が伸びきったまま回旋する投げ方。

治療のロードマップ:復帰までの手順

「痛いけど、休めば治る」と考えてごまかしながらプレーするのが一番危険です。以下のステップで確実に治しましょう。

ステップ1:安静と炎症の抑制(保存療法)

痛みがある時期は、とにかく投球禁止(ノースロー)です。ノースローを徹底すればそれ以上悪化することはありません。

  • アイシング:練習後の熱を持った肩を15分〜20分冷やす。
  • 投球禁止:自分で判断せずに投球を控える。

ステップ2:可動域の回復(リハビリ開始)

痛みが引いてきたら、硬くなった筋肉や関節包をほぐします。特に肩関節の後方関節包が硬くなっていることが多いです。

ステップ3:筋力強化と機能改善

インナーマッスル(腱板)の動きを最適化し、肩甲骨周りの安定性を高めます。チューブトレーニングなどがここに含まれます。

ステップ4:投球再開(リターン・トゥ・スロー)

いきなりマウンドから投げてはいけません。

  1. ネットスロー(至近距離)
  2. 塁間の半分スロー
  3. 塁間スロー(山なり)
  4. 塁間スロー(ライナー)
  5. 遠投
  6. ブルペン(全力の50%→80%→100%)というように、段階的に強度を上げます。

野球肩に効く!ストレッチ&トレーニング解説

ここでは、予防およびリハビリに効果的な代表的なメニューを紹介します。 ※痛みが強い場合は中止してください。

スリーパーストレッチ(Sleeper Stretch)

野球肩の選手に最も多く見られる「肩の後方の硬さ」を取るストレッチです。

  1. 痛い方の肩を下にして横向きに寝る。
  2. 下になった腕を前に出し、肘を90度に曲げる。
  3. 反対の手で、手首を持ち、ゆっくりと床の方へ倒していく(内旋させる)。
  4. 肩の後ろが伸びている感覚があればOK。30秒キープ×3セット。

キャット&ドッグ(胸郭の可動域改善)

肩甲骨と背骨の柔軟性を高めます。

  1. 四つん這いになる。
  2. 息を吐きながら背中を丸め、おへそを覗き込む猫のようなポーズ)。
  3. 息を吸いながら背中を反らし、胸を張って上を見る(犬のポーズ)。
  4. 肩甲骨が外に開いたり、内側に寄ったりするのを意識して10回繰り返す。

インターナル/エクスターナル・ローテーション(チューブトレーニング)

インナーマッスルを刺激、肩関節を安定させます。

  1. 柱などにトレーニングチューブを結ぶ。
  2. 脇にタオルを挟み、肘を90度に固定する。
  3. 内旋(内側に引く):お腹の方へゆっくり引く。
  4. 外旋(外側に開く):お腹から外側へゆっくり開く。
  5. 反動を使わず、地味に効かせるのがコツ。各20回×3セット。

再発を防ぐ!投球フォームの改善ポイント

リハビリで肩が治っても、フォームが悪ければすぐに再発します。チェックすべきは「ゼロポジション」と運動連鎖と呼ばれる「キネティックチェーン」です。

ゼロポジションの獲得

「ゼロポジション」とは、肩甲骨の軸と上腕骨の軸が一直線になるポジションのこと(およそ頭の後ろで手を組む位置)。リリース時にこのゼロポジションでボールを離せると、肩への負担が最小限になり、かつ力が最も伝わります。肘が下がりすぎても、上がりすぎてもいけません。

下半身主導の運動連鎖

「足→腰→体幹→胸→肩→肘→手首→指先」 このエネルギーの連鎖が重要です。

  • ヒップファースト:投げる方向にお尻から移動していく。
  • 割れ(Separation):下半身が投球方向を向いた時、上半身はまだ横(または後ろ)に残っている状態。この捻転差がパワーを生みます。

まとめと当院の方針

野球肩は、単に「肩が悪い」のではなく、「全身の使い方のバランスが崩れた結果、最終的な出力先である肩に負担が集中した」と考えるのが正解です。

  1. 早期発見: 違和感を感じたらすぐにノースロー調整をする。
  2. 原因究明: 柔軟性不足か、フォーム不良かを見極める。
  3. 地道なリハビリ: インナーマッスルと肩甲骨周りを鍛え直す。
  4. 全身運動: 股関節や胸郭を正しい使ったフォームへ修正する。

当院では「痛いから休む」だけでなく、「痛くなった原因を取り除いてステップアップする」期間と捉え、積極的な療養期間に出来るよう指導をしています。例えば野球肩になったとしても肩以外は健康なわけですから他の部位を鍛え復帰に備えていくわけです。正しい知識とケアがあれば、復帰後にはパワーアップして一段階強い野球選手になることができます。

その間に同時並行で肩のケアを勧めていけば野球肩をより良いパフォーマンスでプレーできるよう前向きな療養期間にしていきましょう。

おまけ・よくある質問(FAQ)

Q. 湿布を貼っていれば治りますか?

A. 湿布は炎症を抑え、一時的な痛みを和らげる効果はありますが、根本的な損傷(腱板の傷など)やフォームの悪さを治すものではありません。 リハビリとセットで行う必要があります。

Q. 手術は必要ですか?

A. 多くの野球肩は、保存療法(リハビリ)で治ります。手術が必要になるのは、関節唇の重度な損傷や、リハビリを半年以上続けても改善が見られない場合など、限定的です。

Q. 練習を休みたくないのですが、投げながら治せますか?

A. 痛みの度合いによりますが、基本的に「痛みがあるうちは投げない」が鉄則です。投げながら治そうとすると、痛みを避けるために変な癖(フォーム崩れ)がつき、結果としてイップスになったり、肘など他の箇所を痛める原因になります。

東海市、大府市、知多市で野球肩にお悩みの方「ARK接骨院」へお任せください。

執筆者 柔道整復師 古田 幸大

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!
目次