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「もっと体重を増やしたいのに、食べてもなかなか増えない」
「ラグビーやアメリカンフットボールで当たり負けしてしまう」
「監督やコーチから身体を大きくするよう言われているけれど、これ以上食事量を増やすのがつらい」
コンタクトスポーツに取り組む選手では、このような悩みは珍しくありません。
スポーツでは単純に体重が重ければ強いわけではありません。スピード、筋力、敏捷性、持久力とのバランスも必要です。しかし、スクラム、ブロック、タックル、リバウンド、組み合いなど、相手との身体接触が大きい競技では、筋力だけでは埋められない「体格差」が存在することも事実です。
例えば、激しい身体接触を繰り返すラグビーでは競技特性そのものが身体へ大きな負荷をかけます。ポジションによっては筋力だけでなく、接触時に押し負けないための体重や除脂肪量を獲得することが競技力向上につながります。
そこでこの記事では、食事だけでは体重が増えにくい選手に向けて、プロテイン、ウエイトゲイナー、マルトデキストリン、MCTオイルなどを利用しながら、現実的に体重を増やしていく方法を解説します。

「サプリメントに頼るのは良くない」と考える必要はありません。必要な栄養を通常の食事で確保したうえで、どうしても不足する部分を補うのであれば、サプリメントは非常に便利な道具になります。

ラグビーのフォワード、アメリカンフットボールのOL・DL、柔道、レスリングなどでは、相手と直接力をぶつけ合う場面が数多くあります。
もちろん技術や筋力は重要ですが、同程度の筋力を持つ選手同士が接触した場合、質量が大きいことは一つの武器になります。タックルを受けても姿勢を維持する、スクラムで押し込まれない、ブロックで相手を動かすなど、競技によっては一定の体格そのものに意味があります。
一方で、「100kgを超えれば強い」「とにかく食べて太ればいい」という考え方はおすすめできません。短期間に大量のカロリーを摂取して増えた体重の多くが脂肪であれば、スプリント、ジャンプ、反復走、相対筋力などが低下する可能性があります。
増量で目指したいのは、単純に体重計の数字を大きくすることではなく、筋力やパワーを伸ばしながら競技に必要な体格へ近づけることです。
体重増加の原則は非常にシンプルです。1日に消費するエネルギーより、摂取するエネルギーを多くする必要があります。
しかし、スポーツ選手ではここが難しくなります。
朝から学校へ行き、放課後に2〜3時間練習し、その後さらにウエイトトレーニングを行うような生活では、本人が「かなり食べている」と感じていても、それと同じくらい大量のエネルギーを消費しています。
増量を始めるなら、まず現在の食事に1日200〜400kcal程度を追加するところから考えます。最初から1000kcal、1500kcalと大幅に増やす必要はありません。
すでにトレーニング経験がある選手では、体重増加速度は1週間に体重の約0.25〜0.5%程度を一つの目安にすると調整しやすくなります。
「1か月で10kg増やす」といった極端な増量ではなく、数か月かけて身体を作っていくイメージを持ちましょう。急速に増えた体重が、そのまま筋肉になるわけではありません。
体重を増やしたい選手に対して、「もっと食べればいい」というアドバイスがされることがあります。
確かに理屈としては正しいのですが、人間が一度に食べられる量には限界があります。
こうした選手にさらに「もう一杯ご飯を食べろ」と言い続けても、継続できなければ意味がありません。
私自身、学生時代から契約チームのスポーツ現場で、選手が必要なエネルギーを確保するための補食準備に関わってきました。


このように、競技現場では「3食をしっかり食べる」だけでは必要量に届かないケースがあります。特に練習時間が長い選手では、通常の食事に加えて補食を入れ、1日の総摂取量を増やす工夫が必要になります。
そこで役立つのがサプリメントです。サプリメントは食事の代わりではなく、食事だけでは埋められなかった200〜400kcalを追加する道具として考えると非常に使いやすくなります。
増量を考えると、最初にプロテインを思い浮かべる方も多いと思います。
しかし、プロテインは「体重を増やす粉」ではありません。基本的な役割は、食事だけでは不足するタンパク質を補うことです。
筋力トレーニングを行っている選手なら、食事を含めて1日に体重1kgあたり1.6〜2.0g程度のタンパク質を実用的な目安として考えます。
すでに肉、魚、卵、乳製品などから十分なタンパク質を摂れているのであれば、プロテインを3杯、4杯と増やす必要はありません。
タンパク質は足りているのに体重が増えない場合、不足しているのはプロテインではなく総摂取カロリーや炭水化物かもしれません。
ホエイやソイなどプロテインの種類、成長期の選手がプロテインを利用する際の考え方については、プロテインの選び方とスポーツにおける栄養についての記事で詳しく解説しています。
「タンパク質だけでなく、そもそもカロリーが足りない」という選手に使いやすいのがウエイトゲイナーです。
ウエイトゲイナーという名前から、筋肉を増やす特殊な成分が入っているように感じるかもしれません。実際には、プロテインと多めの炭水化物などを組み合わせ、手軽にカロリーを摂れるようにした食品と考えると分かりやすいでしょう。
最大のメリットは、固形物を大量に食べなくても数百kcalを追加できることです。朝食と昼食の間、練習後、夕食後などに利用できるため、食事回数を大幅に増やせない学生アスリートにも使いやすい方法です。
また、同じウエイトゲイナーでも製品によって中身は大きく異なります。タンパク質が多い製品もあれば、かなり糖質に寄った製品もあります。商品名ではなく、栄養成分表示から1回何kcal・タンパク質何g・炭水化物何gなのかを確認しましょう。
当院代表が中京大学ラグビー部へのコンディションサポートを行っていた際にも、体重の獲得が必要な選手には、通常の食事を基本としながらウエイトゲイナーをうまく利用し、増量を進めてもらっていました。


ラグビーのようなコンタクトスポーツでは、日々の練習やウエイトトレーニングによる消費エネルギーが大きい一方で、ポジションによっては体重そのものも競技力の一要素になります。そのため、食事量を増やすだけでは必要なエネルギーを確保しきれない選手もいます。
そうした場合、食事で足りない分をウエイトゲイナーなどで補うという方法は、実際の競技現場でも取り入れやすい増量方法の一つです。
※写真の商品は当時使用していたものであり、特定の製品の購入を推奨するものではありません。
増量目的では、マルトデキストリンも使いやすい選択肢です。

マルトデキストリンは糖質を補給するためのパウダーで、タンパク質をほとんど増やさず、炭水化物とカロリーを追加できます。
目安として25gなら約100kcal、50gなら約200kcalです。
例えば、普段の食事でタンパク質は足りている70kgの選手が、練習後にプロテイン25〜30gだけ飲んでいるとします。そこへマルトデキストリン50gを追加すれば、タンパク質を必要以上に増やすことなく、約200kcalの糖質を追加できます。
「プロテインを飲んでいるのに体重が増えない」という選手では、プロテインの量を倍にするより、こうした方法の方が目的に合っていることがあります。
MCTオイルなどの脂質は、少ない量でエネルギーを追加できるのが特徴です。

どうしても食事量を増やせない選手では選択肢になりますが、MCTオイルそのものに筋肉を増やす特別な作用があるわけではありません。あくまでエネルギー密度を高める手段です。
また、多量に摂ると腹痛や下痢が起こる人もいるため、使用する場合は5g程度の少量から始め、身体の反応を確認してください。
日常的な脂質源としては、オリーブ油、ナッツ、魚、卵、ピーナッツバターやナッツバターなども利用できます。
増量用のサプリメントは、それぞれ役割が違います。すべてを同時に使う必要はありません。
| 補給方法 | 主な役割 | 向いている選手 |
|---|---|---|
| プロテイン | タンパク質を追加 | 食事だけでは必要なタンパク質量に届かない |
| ウエイトゲイナー | タンパク質+糖質を中心にカロリーを追加 | 食事量が少なく総摂取カロリーも不足している |
| マルトデキストリン | 糖質・カロリーを追加 | タンパク質は足りているがエネルギーが不足している |
| MCTオイル | 少量でカロリーを追加 | 固形物や大量の飲料を増やすのが難しい |
重要なのは全部使うことではなく、「自分には何が不足しているのか」を考えて選ぶことです。
肉や魚をしっかり食べていてタンパク質は十分なのに体重が増えない人が、プロテインだけを増やし続けても効率の良い増量にはなりません。その場合は、ご飯や補食、ウエイトゲイナー、マルトデキストリンなどで総摂取エネルギーを増やす方が目的に合っています。
増量は1日だけ大量に食べれば成功するものではありません。毎日少しずつエネルギーを上乗せする必要があるため、同じ量を再現しやすいことはサプリメントを利用する大きなメリットです。
ウエイトゲイナーやマルトデキストリンは便利ですが、1000kcal余分に摂ったからといって、そのエネルギーがすべて筋肉になるわけではありません。
身体が筋肉として増やせる速度には限界があります。必要以上のエネルギーを長期間摂れば、当然ながら脂肪も増えていきます。
そのため、「ゲイナーを1日何杯飲むか」ではなく、目標とする体重増加速度に対して何kcal追加する必要があるのかから考えましょう。
増量中に「内臓が疲れた」と表現する人もいますが、「内臓疲労」は医学的な診断名ではありません。
実際には、満腹感、膨満感、げっぷ、胃もたれ、逆流、下痢、便秘、食欲低下などが起きていることがあります。
一度に大量のゲイナー、マルトデキストリン、牛乳、MCTオイルなどを摂れば、胃腸症状が出ても不思議ではありません。
その場合は、例えば100gのゲイナーを一度に摂るのではなく50gずつ2回へ分けるなど、まず1回量を減らします。牛乳で腹痛や下痢が出る場合には、牛乳を水へ変更したり、乳糖の少ないプロテインを検討したりする方法もあります。
増量のために無理やり食べた結果、次の食事が入らなくなれば本末転倒です。
プロテインやゲイナーを利用する際、「トレーニング終了後30分以内でなければ意味がない」と焦る必要はありません。
まず重要なのは、1日全体で必要なエネルギーとタンパク質を確保することです。そのうえで、食事と食事の間や、練習後から夕食までの空白など、栄養が不足しやすい時間に入れると使いやすくなります。
一方、試合当日は「増量すること」よりも、胃腸へ負担をかけず、競技で使えるエネルギーを確保することが優先されます。試合前日の食事や当日の朝食、補食については試合前後の食事と栄養補給についての記事で詳しく解説しています。
体重を増やすだけなら、摂取カロリーを増やせば可能です。
しかし、コンタクトスポーツで欲しいのは、単なる体重ではなく競技で使える身体です。
そのため、増量期間中もスクワット、ヒンジ動作、プレス、ロー・プル系などを中心としたレジスタンストレーニングを継続し、少しずつ重量や反復回数を伸ばしていくことが重要です。
ただし、身体を大きくしたいからといって急激に重量を増やす必要はありません。高重量を扱うトレーニングでは肩や腰などへ大きな負荷もかかります。筋トレ中の身体の痛みやケガについてはウエイトトレーニングで起こるケガと身体の痛みについての記事も参考にしてください。
この記事ではサプリメントを中心に説明していますが、土台になるのは通常の食事です。
増量中も、肉だけ、プロテインだけを増やせばいいわけではありません。特に練習量の多いスポーツ選手では、筋肉を動かすためのエネルギー源となる炭水化物も重要です。
これだけでも1日に200〜300kcal程度追加できることがあります。それでも不足する分をウエイトゲイナーやマルトデキストリンで補えば、食事だけで限界まで食べ続ける必要はありません。
また、小学生・中学生など成長期の選手は、競技のための体重増加だけでなく、身体そのものが成長するためのエネルギーも必要です。成長期の食事や栄養については子どもの成長期と食事についての記事も併せてご覧ください。
増量を始めたら、できれば毎朝同じ条件で体重を測りましょう。おすすめは、起床後、排尿後、朝食前などです。
体重は水分量、塩分摂取、前日の食事量、便通などでも簡単に数百gから1kg程度変動します。そのため、「昨日より700g増えた」「今日は500g減った」という1日の数字だけで判断する必要はありません。
7日間の平均体重を出し、2週間程度の流れを見る方が実際の増量を判断しやすくなります。
さらに、体重だけではなくスクワットなどの筋力、ジャンプ、スプリント、接触時の安定性なども確認します。
「体重が増えた」ではなく、「増えた体重が競技力につながったか」まで確認することが重要です。
毎日プロテインシェイクを飲んでいると、味に飽きたり、冷たい飲み物を何杯も飲むのがつらくなったりすることがあります。

そんな選手には、プロテインを「飲む」のではなく、補食として食べる方法もあります。
| ホエイプロテイン | 60g |
| ホットケーキミックス | 30g |
| 卵 | 1個 |
| 牛乳 | 120mL |
| バナナ | 約100g(1本程度) |
| 焼くための油 | 約5g |
バナナをつぶし、卵と牛乳を混ぜます。そこへプロテインとホットケーキミックスを少しずつ加えます。生地が硬ければ水または牛乳を加え、普通のホットケーキより少しゆるい程度へ調整します。
プロテインの割合が多い生地は通常のホットケーキより焦げやすく、加熱しすぎると硬くなるため、弱〜中火で焼くのがポイントです。
使用する商品によって数値は変わりますが、この配合では全量でおよそ630kcal、タンパク質約60g程度になります。4枚程度に分けて2枚食べれば、約300kcalとタンパク質約30gを補えるため、増量中の補食にも利用できます。
さらにカロリーを増やしたい場合は、プロテインそのものを増やすより、はちみつ、バナナ、ヨーグルト、ピーナッツバターなどをトッピングした方が、糖質や脂質も追加できます。
競技会へ出場する選手は、サプリメントの栄養成分だけでなくアンチ・ドーピングについても確認しておきましょう。
サプリメントでは、原材料や製造工程などを通じて意図しない成分が混入する可能性を完全にゼロにはできません。
特に全国大会や競技団体の検査対象になる可能性がある選手では、価格や味だけで決めず、第三者によるアンチ・ドーピング認証や製造管理についても確認しておくことが大切です。
コンタクトスポーツでは、身体の大きさそのものが競技力につながる場面があります。そのため、必要な選手が計画的に体重を増やすことには十分な意味があります。
しかし、増量は「とにかく食べる」「毎日プロテインを何杯も飲む」というものではありません。
大切なのは、サプリメントをたくさん使うことではありません。自分に何が不足していて、あとどれだけ追加すればいいのかを把握することです。
食事だけではなかなか増えなかった選手でも、毎日不足していた200〜300kcalを安定して補給できるようになるだけで、数週間から数か月後の身体は変わっていきます。
体重だけを追いかけるのではなく、筋力、スピード、接触時の強さ、体調まで確認しながら、競技に必要な身体づくりを進めていきましょう。
なお、腎疾患、糖尿病、高血圧などの持病がある方や、増量中に強い腹痛、繰り返す嘔吐、著しいむくみ、血尿・血便などがみられる場合は、一般的なスポーツ栄養の数値をそのまま当てはめず、医療機関へ相談してください。
執筆者 柔道整復師 古田 幸大

本記事では、スポーツ選手の体重増加、タンパク質摂取、サプリメント利用、安全性などについて、以下の研究・ガイドライン・公式資料を参考にしています。
※研究結果やガイドラインは、対象者の年齢、競技レベル、健康状態などによってそのまま当てはめられない場合があります。本記事では健康なスポーツ選手を主な対象として一般的な考え方を紹介しています。