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ハンドボールは、走る・跳ぶ・投げる・止まる・方向転換するといった動作を繰り返しながら、相手選手との身体接触も行われる競技です。コートの中では短い距離で加速と減速を繰り返し、攻撃ではジャンプシュート、ディフェンスでは横方向への素早い移動やブロックなど、全身を使った激しい動作が続きます。
そのため、ハンドボールでは足首や膝といった下肢の怪我だけでなく、シュート動作による肩の痛み、ボールを受けた際の突き指、相手との接触による打撲や頭部外傷など、さまざまな怪我が起こります。
今回は、ARK接骨院でこれまでハンドボール選手から受けた相談や施術経験をもとに、「当院調べ」としてハンドボールで多い怪我ランキングTOP3を紹介します。全国の傷害統計をそのまま順位化したものではなく、当院で実際にみる機会が多い怪我と、ハンドボールという競技特性を合わせてまとめたランキングです。
ハンドボールで起こる怪我全般については、ハンドボールの怪我についての総合解説でも詳しく紹介しています。今回はその中でも特に多いものをランキング形式で掘り下げていきます。

1位は足関節捻挫、2位は膝の怪我、3位は肩の怪我です。どれもハンドボールの競技動作を考えると起こりやすい理由があります。足首と膝はジャンプ、着地、切り返しなどの影響を受け、肩は繰り返されるシュート動作によって負担を受けます。
また、今回TOP3には入れていませんが、突き指などの手指外傷、脳振盪、腰痛、打撲などもハンドボールでは注意したい怪我です。ランキング外の怪我についても後半で紹介します。
当院でハンドボール選手をみる中で、特に多いと感じる怪我が足関節捻挫です。ハンドボールではジャンプシュートやブロックなど空中でのプレーが多く、着地した瞬間に相手選手の足を踏んだり、自分の足が予定していた場所へ着かなかったりすることで足首を捻ることがあります。

特にゴール付近では攻撃側と守備側の選手が密集します。シュートを打った選手は空中にいる間に相手との接触を受けることもあり、着地位置を自由に選べないことがあります。ジャンプした時には問題がなくても、着地した場所に他の選手の足があれば、それを踏んだ瞬間に足首が大きく傾くことがあります。
また、フェイントやディフェンスでは左右への急激な切り返しを繰り返します。体育館の床はシューズとの摩擦が大きく、足部が床に残った状態で身体だけが動けば、足首や膝へ大きな力が加わります。一般的な足関節捻挫では、足裏が内側を向くように捻る内反捻挫が多く、足首外側の靱帯を損傷します。
足首を捻ったあと、そのまま歩けると「軽い捻挫だから大丈夫」と判断されることがあります。しかし、歩行ができることだけで怪我の程度を判断することはできません。どこを押すと痛いのか、腫れがどの程度あるのか、荷重した時の痛み、関節の不安定感などを確認する必要があります。
骨の周囲に強い圧痛がある、体重をほとんどかけられない、腫れが急速に強くなる、明らかな変形があるといった場合には、骨折なども考慮する必要があります。状態によっては整形外科など医療機関で画像評価を受けることも重要です。
足関節捻挫の構造や症状、評価、競技復帰については、足首の捻挫の専門ページでも詳しく解説しています。
ハンドボール選手の足関節捻挫で注意したいのが、復帰後に再び同じ足首を捻ることです。痛みが少なくなれば日常生活は比較的早い段階で行えるようになることがあります。しかし、日常生活で歩けることと、ハンドボールの競技動作が安全にできることは別です。
競技ではダッシュ、急停止、サイドステップ、ジャンプ、片脚着地などが連続して行われます。そのため、競技へ戻る際には痛みだけでなく、足首の動き、筋力、片脚での安定性、ジャンプや着地、方向転換などを段階的に確認していきます。
必要に応じてテーピングやサポーターなどを利用することもありますが、それだけで再受傷を完全に防げるわけではありません。足首だけではなく膝や股関節を含め、下肢全体で身体を支えられる状態を作っていくことが大切です。
2位は膝の怪我です。ハンドボールではジャンプ、着地、急停止、方向転換を短時間に何度も繰り返します。攻撃側の選手はディフェンスをかわすためにフェイントを入れ、身体の進行方向を一瞬で変えることもあります。

こうした場面では膝へ大きな負荷がかかります。その中でも、競技復帰まで長い期間を要することがある大きな怪我の一つが前十字靱帯(ACL)損傷です。
ACL損傷というと、相手選手と激しく接触した時に起こるイメージを持つ人もいるかもしれません。しかし実際には、着地や方向転換など相手との直接的な接触がない場面で起こることもあります。
ジャンプから着地した瞬間や、スピードを出した状態から急激に方向を変えた際、膝へ大きな回旋力や剪断力が加わることで損傷につながる場合があります。ハンドボールではこうした動作が競技中に何度も登場するため、ACL損傷は特に注意したい怪我です。

受傷時には膝の中で「ブチッ」とした感覚を覚えたり、その後に関節が腫れてきたり、膝が抜けるような不安定感を感じたりすることがあります。ただし症状の現れ方には個人差があります。受傷後に歩けたとしても、それだけでACL損傷を否定できるわけではありません。ACL損傷について詳しくはこちらの記事でも解説しています。
ACL損傷はさまざまなスポーツでみられますが、ジャンプや切り返しの多い競技では女子選手でも重要な外傷の一つです。着地時の身体の使い方、下肢の筋力、体幹の安定性、股関節・膝・足首の連動など、複数の要素を考えながら予防や復帰を考える必要があります。女性アスリートでは身体的特徴やコンディション管理など、男性とは異なる視点も重要です。詳しくは、女性アスリート必見!ケガが多い理由と男性との違いでも解説しています。

もちろん「膝が内側に入ったからACLが切れる」という単純な話ではありません。競技速度、接地位置、身体の向き、疲労、相手との位置関係など多くの要因が重なります。そのため、一つの動作だけを切り取って原因と決めつけるのではなく、実際の競技動作全体を見ることが大切です。
ハンドボールで起こる膝のトラブルはACL損傷だけではありません。ジャンプ動作を繰り返すことで膝蓋腱周囲に痛みが出たり、成長期の選手では膝の前方に痛みが出たりすることもあります。
急性外傷なのか、繰り返しの負荷によって徐々に痛みが出てきたのかによって、考えるべき状態は変わります。いつ痛くなったのか、どの動作で痛むのか、腫れがあるのか、ジャンプや着地でどう感じるのかなどを確認することが重要です。
3位は肩の怪我です。ハンドボールは野球などと同じく、オーバーヘッドでボールを強く投げる動作を繰り返す競技です。しかし野球とは異なり、助走、ジャンプ、空中での身体操作、相手との接触などが加わるのがハンドボールの特徴です。

ジャンプシュートでは、下半身で作った力を体幹へ伝え、身体をひねりながら肩、肘、手へと力を伝えてボールを投げます。肩だけでボールを投げているわけではなく、全身が連動して一つのシュート動作を作っています。
そのため、疲労や動作の変化によって下半身や体幹から十分に力を伝えられなくなると、肩周囲へ負担が集中することがあります。シュート本数が増えた時期や練習量が急に増えた時、連戦が続いた時などに肩の違和感を訴える選手もいます。
ハンドボールの肩の怪我を考える際、もう一つ特徴的なのが身体接触です。シュート動作中にディフェンスから接触を受けたり、腕を伸ばした状態で外力を受けたりすることで、肩関節へ大きな力が加わることがあります。

当院でも、ハンドボール選手の肩のトラブルとして、肩関節の亜脱臼や不安定感、上腕二頭筋長頭腱周囲の痛み、投球動作に伴う肩の痛みなどをみることがあります。
ハンドボールで起こる肩の怪我については、ハンドボール選手に起こる肩の怪我についてでも詳しく紹介しています。
シュート時に肩が痛いからといって、原因が必ず肩だけにあるとは限りません。股関節や体幹の動き、胸郭や肩甲骨の可動性、肘の動きなどが変化することで、結果として肩へ負担が集中している場合もあります。
逆に、肩関節そのものに問題がある場合には、無理に投球フォームだけを変更しても解決しません。どの角度で痛いのか、投球のどのタイミングで痛むのか、肩の可動域や筋力はどうかなどを確認しながら原因を考えていく必要があります。
今回は当院で多くみる怪我をTOP3として紹介しましたが、ハンドボールで起こる怪我はもちろんこれだけではありません。競技中には突き指・手指外傷、脳振盪、腰部の痛み、打撲なども起こる可能性があります。
ハンドボールでは高速で飛んでくるボールを直接手でキャッチします。また、ディフェンスでは相手のシュートを手でブロックするため、予想していない方向から指へボールが当たり、いわゆる突き指を起こすことがあります。
ただし「突き指」は一つの診断名ではありません。指の靱帯損傷、腱損傷、骨折、脱臼などさまざまな状態が含まれます。ボールが当たっただけだから大丈夫と考えず、強い腫れ、変形、曲げ伸ばしができない、指先が自力で伸びないなどの症状がある場合には注意が必要です。
突き指については、突き指の症状・原因・対処についての専門ページでも詳しく解説しています。
ハンドボールでは身体接触による転倒や、ボールが頭部へ当たることで頭部外傷が起こることもあります。頭を打ったあとに頭痛、吐き気、めまい、ぼんやりする、反応が遅い、記憶が曖昧になるなどの症状がみられる場合には、脳振盪も考える必要があります。
脳振盪が疑われる場合には「少し休んだら戻る」という判断ではなく、競技を中止して医療機関での評価を優先します。頭部外傷は足首や肩の怪我とは異なり、その場で無理をして競技を続けないことが特に重要です。
ジャンプシュートでは身体を大きく反らしたり、ひねったりする動作が繰り返されます。さらにディフェンスでは低い姿勢を維持しながら左右へ移動するため、腰部にも繰り返し負荷が加わります。
特に成長期の選手で腰痛が続く場合には、単なる筋肉痛だけでなく腰椎分離症なども考慮する必要があります。痛みが長く続く場合や、身体を反らした時の痛みが強い場合などは、状態に応じて医療機関で画像評価を受けることも大切です。詳しくはスポーツ腰痛バイブルでも解説しています。
ハンドボールでは攻守ともに身体接触があり、転倒する場面も少なくありません。そのため、大腿部、肩、肘、腰などの打撲も起こります。多くは時間とともに改善していきますが、痛みが非常に強い、腫れが大きい、関節を動かせないといった場合には、骨折など別の外傷がないか確認が必要です。打撲について詳しくは打撲の教科書でも詳しく解説しています。

怪我をした選手にとって、痛みがなくなることは競技復帰へ向けた大切な一歩です。しかし、日常生活で痛みがなくなったからといって、そのままハンドボールへ完全復帰できるとは限りません。
ハンドボールでは、走る、止まる、ジャンプする、片脚で着地する、横へ切り返す、相手と接触する、強くボールを投げるといった動作を組み合わせながらプレーします。そのため競技復帰では、怪我をした部位だけでなく、実際の競技動作に身体が対応できる状態なのかを確認していくことが重要です。
例えば足首を捻挫した選手であれば、歩けるようになったあとにジョギング、ダッシュ、ジャンプ、片脚着地、切り返しと少しずつ競技動作へ近づけていきます。肩を痛めた選手であれば、肩の動きや筋力を確認したうえで、軽いパスから始め、徐々に投球距離や強度を上げていく必要があります。
怪我をしたからといって、必ずしも身体をすべて休ませる必要があるわけではありません。損傷した組織を守ることは必要ですが、その時点で安全に行えるトレーニングまで全て止めてしまえば、競技復帰時に体力や筋力が大きく低下していることもあります。
状態に応じてできる運動を続けながら、段階的に競技へ戻していく。これはハンドボールに限らず、スポーツ外傷から復帰する際に大切な考え方です。
スポーツをしている以上、怪我を完全にゼロにすることはできません。相手の足を踏んでしまう、予想していない接触を受ける、ボールが指へ当たるなど、自分だけでは避けられない怪我もあります。
一方で、疲労した状態でも安定して着地できる身体を作る、急な切り返しに対応できる下肢の筋力をつける、肩だけに頼らず全身を使って投げる、練習量が急激に増えないよう調整するなど、日頃からできる準備もあります。
また、小さな違和感を放置しないことも大切です。「まだ投げられるから」「試合が近いから」と痛みを抱えたまま練習を続け、結果として長期間競技を休まなければならない状態になることもあります。早い段階で身体の状態を確認することで、できる練習と控えた方がよい動作を整理できる場合があります。
このほかにも、突き指・手指外傷、脳振盪、腰痛、打撲など、ハンドボールではさまざまな怪我が起こります。競技特性を考えれば、足首だけ、膝だけ、肩だけを単独で見るのではなく、実際にどのような動作で痛みや不安定感が出ているのかを確認することが重要です。
そして怪我をした時には、「痛みがなくなったから復帰」ではなく、走る、跳ぶ、止まる、切り返す、投げるといったハンドボールに必要な動作まで段階的に戻していきます。怪我の状態を確認しながら、その選手が再び安全にコートへ戻るところまで考えることが大切です。
ハンドボールはスピード、ジャンプ、パワー、身体接触など多くの要素が詰まった競技です。だからこそ身体への負担も大きくなりますが、怪我への正しい対応と競技復帰までの準備を行いながら、長く競技を続けられる身体を作っていきましょう。
執筆者 柔道整復師 古田 幸大
