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「オスグッドとオスグット、どっちが正しいの?」
成長期のスポーツ選手に多い膝の痛みについて調べていると、「オスグッド」と「オスグット」という2つの表記を見かけることがあります。
病院では「オスグッドですね」と言われたのに、インターネットでは「オスグット」と書かれている。子どものチームメイトや保護者同士でも、呼び方が微妙に違う。
では、いったいどちらが正しいのでしょうか。

先に結論を言うと、現在の医学・医療の世界で一般的に使われている表記は「オスグッド」です。
日本整形外科学会でも現在は「オスグッド病」という名称が使われています。
しかし、だからといって「オスグットはただの間違い」と片付けてしまうと、実は少し違います。
病名の歴史を調べていくと、日本の医学界でも過去に「オスグット」という表記が実際に使われていたことが分かります。
今回は普段のケガ解説から少し離れて、「オスグッド」という名前そのものを掘り下げてみます。
オスグッドの症状・原因・競技復帰について知りたい方は、ARK接骨院のオスグッド総合解説ページをご覧ください。
現在、日本の医療機関やスポーツ医学の情報を見ると、基本的に使用されているのは「オスグッド」です。
日本整形外科学会の一般向け疾患解説でも、ページタイトルは「オスグッド病」となっています。
そのため、ARK接骨院でも現在はサイト内の基本表記を「オスグッド」に統一しています。
Googleなどで症状について調べる場合も、まずは「オスグッド」で検索するのが現在では一般的でしょう。
普段は「オスグッド」と短く呼ばれていますが、英語ではOsgood-Schlatter diseaseと呼ばれます。
日本語では一般的に、
オスグッド・シュラッター病
と表記されます。
つまり「オスグッド」という言葉は、本来の病名の前半部分だけが日常的に使われるようになったものです。
ちなみに、この「Osgood」と「Schlatter」は膝の部位や症状を表す医学用語ではありません。
2人の医師の名字です。

1人目は、アメリカの整形外科医Robert Bayley Osgood(ロバート・ベイリー・オスグッド)。
もう1人は、スイスの外科医Carl Schlatter(カール・シュラッター)です。
医学には、病気や徴候などを最初に詳しく報告した人物の名前が、そのまま医学用語として残ることがあります。
こうした人名由来の名称をエポニム(eponym)と呼びます。
オスグッド・シュラッター病も、その代表的な一つです。
この病名の歴史で面白いのは、OsgoodとSchlatterが2人で一緒に研究していたわけではないことです。
1903年、アメリカのOsgoodとスイスのSchlatterが、それぞれ独立して成長期の脛骨粗面に起こる障害について報告しました。
それ以前にも似た症例は報告されていましたが、2人はこの病態についてそれまでより詳しく記載しました。
また、この時代はX線(レントゲン)が医療へ導入され始めた時期でもあり、1903年のOsgoodとSchlatterの報告は画像所見を伴った初期の報告としても医学史上重要とされています。
医学史については、米国国立医学図書館PubMedに掲載されているOsgood-Schlatter病の歴史に関する論文や、スポーツ医学におけるエポニムの歴史的レビューでも確認できます。
同じ1903年。
アメリカとスイスという離れた場所で、2人の医師が同じ病態について報告した。
その結果、2人の名字をつなげたOsgood-Schlatter diseaseという名前が100年以上経った現在まで残っています。
今では日本の中学生が部活動中に普通に「俺、オスグッドになった」と話しているわけですから、病名の歴史を知るとなかなか面白いものです。
では、なぜ日本では「オスグット」という言葉が残っているのでしょうか。
単純に「オスグッドを打ち間違えた人が増えたから」というだけではありません。
実は、日本の医学界でも「オスグット」という表記が実際に使われていた歴史があります。
日本整形外科学会が公開している整形外科の歴史資料を見ると、OsgoodとSchlatterについて、
オスグット-シュラッテル病
という表記が残されています。
興味のある方は日本整形外科学会の歴史資料を見ると、実際の記載を確認できます。
さらに、1968年に群馬大学医学部整形外科学教室から発表された論文では、
「オスグッド・シュラッテル氏病のレ線学的研究」
というタイトルが使われています。
こちらはJ-STAGEで現在も確認することができます。つまり日本では、時代や資料によって、
といった表記の揺れが存在していたことが分かります。
OsgoodやSchlatterは、もともと日本語の言葉ではありません。
外国人の名前をカタカナに置き換えるとき、外国語の音と日本語の音を完全に一致させることはできません。
そのため、外国人名を由来とする医学用語では、時代や翻訳した文献によってカタカナ表記が変わることがあります。
現在では医学用語の標準化が進み、学会や医療機関で使用される言葉も以前より統一されています。
その流れの中で、現在は「オスグッド・シュラッター病」や「オスグッド病」という表記が一般的になっています。
現在の記事や医療情報を書くのであれば、ARK接骨院では「オスグッド」を基本表記にしています。
その意味では、現在の標準的な表記として選ぶなら「オスグッド」です。
しかし歴史を考えると、「オスグットという言葉は昔から全部間違いだった」とも言い切れません。
日本整形外科学会の資料そのものに「オスグット-シュラッテル病」という記録が残っているからです。
現在では標準表記ではなくなったものの、歴史的に存在した日本語表記の一つと考えた方が実態に近いでしょう。
医学用語が「オスグッド」に統一されてきても、一般の方が検索するときまで完全に同じ表記になるとは限りません。
例えば病院や接骨院で、「これはオスグッドですね」
と言われた保護者の方が、初めてその病名を耳で聞いたとします。
帰宅してスマートフォンで検索するときに、
と入力しても、何も不思議ではありません。
検索する人にとって大切なのは、医学用語として完璧なカタカナを入力できることではありません。
「子どもの膝に何が起きているのか」「このままスポーツを続けてもいいのか」という疑問に、必要な情報が届くことの方が重要です。
ARK接骨院のホームページでは、現在の基本表記を「オスグッド」にしています。
これは、日本整形外科学会をはじめ現在の医療情報で一般的に使われている名称へ合わせるためです。
一方で、サイト内から「オスグット」という文字をすべて機械的に消す必要もないと考えています。
ARK接骨院のホームページには、オスグッドだけでも症状の総合解説、地域別、競技別など複数の記事があります。
基本となる名称は統一しながらも、実際にクライアントや保護者の方が使う別表記を文章の中に自然に残すことで、どちらの言葉から検索しても正しい情報へ辿り着けるようにしています。
これは、当院のホームページで「ジャンパー膝」と「ジャンパーニー」の両方の言葉を使用しているのと同じ考え方です。
専門家が使う言葉と、クライアントが検索する言葉は必ずしも同じではありません。
正しい用語を使用することと、実際に使われている言葉を無視しないこと。
その両方が必要だと考えています。
医学用語としては、これからも「オスグッド」が中心であり続けると考えられます。
学会や医療機関が現在「オスグッド病」「オスグッド・シュラッター病」という名称を使用している以上、医学的な文章で「オスグット」が再び主流になる可能性は高くないでしょう。
ただし、一般の方が使う言葉として「オスグット」が完全に消えるかは別の話です。
そもそも日本で実際に使用されていた歴史がありますし、耳から聞いた言葉を文字にすると「オスグット」と表記する人が今後も一定数いて不思議ではありません。
また、検索エンジン側も以前より言葉の意味や表記揺れを理解するようになっています。
そのため、これからのホームページ運営では、検索のためだけに「オスグッド、オスグット、オスグッド、オスグット」と不自然に言葉を詰め込む必要はありません。
現在の正式な表記を基本にしながら、実際にクライアントが使用する別表記も必要な場所へ自然に残す。
ARK接骨院では、この形が一番分かりやすいと考えています。
今回は「オスグッドとオスグットのどちらが正しいのか」という病名の歴史を中心に解説しました。
そのため、オスグッドそのものの症状や施術、競技復帰についてはここでは深く扱っていません。
膝のお皿の下が痛い、脛骨粗面が出っ張ってきた、ジャンプやダッシュで痛む、スポーツを続けながらどう対応すればよいのか知りたい場合は、以下の記事をご覧ください。
1903年にアメリカとスイスで報告された膝の障害が、100年以上経った日本で「オスグッド」と呼ばれています。
そして、その長い歴史の途中には「オスグット」「シュラッテル」と呼ばれていた時代もありました。
普段何気なく使っている病名一つにも、調べてみると意外と長い歴史があります。呼び方が「オスグッド」でも「オスグット」でも、その言葉を検索している方が知りたいのは、目の前にいる選手の膝についてだと思います。
個人的には、「オスグッド」と「オスグット」のどちらを使っているかについて、意味がきちんと伝わっているのであれば、いちいち目くじらを立てて訂正する必要はないと思っています。
特に親御さんの世代によっては、学生時代や子どもの頃に「オスグット」と教わったり、周囲からその呼び方を耳にしたりして、そのまま使っていることもあるでしょう。実際に日本の医学界でも過去には異なる表記が使われていた歴史があります。
現在の標準的な表記を知っておくことは大切ですが、言葉は相手に意味を伝えるためのものでもあります。「オスグッドが正しくて、オスグットは絶対に間違い」と言葉だけを正すことより、その先にある膝の状態やスポーツへの影響を正しく理解することの方が大切だとARK接骨院では考えています。
ARK接骨院では、これからも医学的に一般的な表記を基本としながら、クライアントが実際に使う言葉も大切にし、必要な情報へ辿り着けるブログを更新していきます。
執筆者 柔道整復師 古田 幸大
