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※ここからは映画『ちいかわ 人魚の島のひみつ』の物語の核心に触れます。公開からある程度日数も経っているため、ネタバレはほぼ全開で書いています。未鑑賞の方はご注意ください。

映画『ちいかわ 人魚の島のひみつ』を、今のところ4回観に行きました。
もともと『ちいかわ』の原作は読んでいたため、人魚の島で何が起こるのか、セイレーンやヒトハ・フタバをめぐる物語についても、ある程度は知った状態での鑑賞でした。
それでも、漫画として読むのと映画館のスクリーンで観るのとでは、かなり印象が違います。原作では自分のペースでページを進められますが、映画になると表情や声、音楽、沈黙の「間」まで含めて一つの時間として流れていきます。
改めて感じたのは、ちいかわたちは意外なほど多くを言葉にしないこと。その分、「今、何を考えているんだろう」と表情や仕草から想像する場面が多く、それがこの物語の重さにもつながっているように感じました。
その一方で、シーサーの可愛さにはとことん癒され、うさぎとモモンガの予測不能な行動には何度観ても驚かされます。
かわいい作品なのは間違いない。でも、人魚の島編はそれだけでは終わりません。
1回目の鑑賞で「今日の日はさようなら」が流れた時、真っ先に頭に浮かんだのが、
「エヴァンゲリオンか……?」という感想でした。
この曲は『ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破』でも非常に印象的な場面で使われています。自分にとっては相当なトラウマシーンと結びついている曲なので、『ちいかわ』で耳にした瞬間にどうしてもそちらを連想してしまいました。
余談ですが、エヴァンゲリオンであの場面に明るい歌が流れるのは、映像も音楽も暗くしてしまったら辛すぎて観ていられないからではないか、と以前から感じていました。
そして、これは『人魚の島のひみつ』にも通じるものがあるように思います。
例えばセイレーンが、犯人を見つけたら暗いところにずっと閉じ込める、という趣旨の話をする場面。
文章だけ抜き出して考えれば、かなり恐ろしいことを言っています。
ところが、それをセイレーンは飛び切り明るく歌いながら説明する。
キャラクターはかわいい。歌も明るい。その場ではコミカルに観られてしまう。
でも少し冷静になってみると、「いや、今かなり怖いこと言ってなかった?」となります。
ちいかわだから穏やかに観ていられるけれど、そこで起きていることを人間同士の出来事に置き換えて考えてみると、一気に怖くなる。自分がこの映画を「かわいい」で終われなかった理由の一つが、この明るさに包まれた重さや怖さでした。
この作品で一番考えさせられたのは、単純な「正義対悪」の物語になっていないことです。
物語の序盤だけを見ると、セイレーンは被害者に見えます。
仲間である人魚を殺された。だから犯人を探している。その事情だけを見れば、初めは「かわいそうだ」と感じても不思議ではありません。
しかし、回想によって状況の見え方が一気に変わります。
フタバが瀕死になった原因にセイレーンが関係しており、フタバを助けるためにヒトハが人魚の命を奪ったことが明らかになる。
ここまで分かると、自分の中ではセイレーンに対する「かわいそう」という気持ちはかなり薄れました。
率直に言えば、「それは自業自得じゃないか」と思った部分もあります。
ただ、だからといってヒトハの行動を完全に正しいと言い切れるかというと、それも違う。
大切な存在が目の前で死ぬかもしれない。しかも、その原因を作った相手がいる。そこで冷静でいられるのかと言われれば、自分にも分かりません。
でも、相手側に原因があったとしても、そのために別の命を奪うことまで正当化できるのか。
セイレーンにも原因がある。ヒトハの行動にも問題がある。それでも、どちらか一方だけを「悪」として片付けることはできない。
だから考えれば考えるほど、最後はこの言葉に戻ってきます。
「じゃあ、どうすればよかったんだ?」
簡単に答えを出せないところが、この作品のすごさだと思いました。
プリキュアやウルトラマンなど、子どもも楽しめる王道作品では、「正義」と「悪」の構図が比較的分かりやすく描かれることがあります。
一方で今回、自分が強く感じたのは、
「どちらが正しいのか」ではなく、「なぜ争うことになってしまったのか」
という問いでした。
一つの場面だけを切り取れば、加害者と被害者は簡単に決められることがあります。
しかし、その一つ前の出来事まで戻れば関係が変わる。さらにその前まで戻れば、また見え方が変わる。
自分は被害者だと思っている。でも相手もまた、自分こそ被害者だと思っている。
そうやって報復が続いていけば、最初の争いがどこから始まったのかすら分からなくなっていく。
ちいかわたちだからかわいい絵柄の中で観ていられますが、これをそのまま人間同士の出来事に置き換えると、かなり考えさせられると同時に怖い話です。
かわいいキャラクターを観ているはずなのに、気がつけば人間同士の争いや報復について考えている。
これが1回目に観終わった時、一番強く残った印象でした。
そして4回観ても、やはり強く印象に残るのが終盤のちいかわです。
図鑑、鱗、乾電池。
ちいかわは、ヒトハとフタバが人魚の一件に関わっていることを示すものを自分の目で見ています。
二人に事実確認をすれば、本当に何が起きたのかを明らかにできたかもしれない。
ハチワレに話せば、一人で抱えなくてもよかったかもしれない。
「こんなものを見てしまった」と誰かに共有すれば、自分の心の中に漂っている重く暗い靄を少しは晴らすことができたかもしれません。
一人で背負うには、あまりにも重い仮説です。誰か一緒に運んでほしいと思っても不思議ではありません。
それでも、ちいかわは誰にも話さなかった。
ヒトハとフタバが手を取り合い、その手が震えている。
その姿を前にして、二人がこれまでどんな不安や後悔を抱え、どんな覚悟を持って生きてきたのかを、ちいかわなりに感じ取ったのかもしれません。
もちろん、ちいかわ本人が何を考えていたのかを断定することはできません。
ただ、自分には「自分が楽になるために真実を明らかにすること」よりも、「その真実を明らかにした時に相手がどうなるのか」を選んだように見えました。
事実だから言う。正しいことだから言う。それだけではなく、その言葉によって相手に何が起こるのかまで考える。
そして、あえて言わない。
自分が同じ立場なら、誰かに話して楽になりたいと思ってしまうかもしれません。
だからこそ、自分の心を軽くすることよりも他者の幸せを選んだように見えるちいかわの行動には、自分も見習わなければならないものがあると感じました。
原作を読んでいたので、物語そのものを初めて知ったわけではありません。
それでも映画館で改めて観ると、
「これを小さい子も観るんだよな……」
という、なんとも言えない気持ちにはなりました。
命を奪うこと。仲間を守ること。復讐すること。秘密を抱えること。
そして、「相手に原因があるなら、自分がやり返すことはどこまで許されるのか」という問題。
大人でも簡単には答えが出ないテーマです。
それを、ちいかわという圧倒的にかわいいキャラクターたちが背負っている。
かわいさがあるから観られる。でも、かわいさに包まれているからこそ、少し時間が経ってから内容の重さに気づく。
そこも、この作品のすごさだと思います。
もう一つ感心したのは、映画そのものだけではありません。
これだけ大きなムーブメントを起こしている作品だけあって、映画公開に合わせたPRや企業とのコラボ、関連商品の展開まで本当にすごい。
その中でも個人的に一番驚いたのが、セブン‐イレブンとのコラボで登場した赤魚の煮付けでした。
映画を観た後なら、「ああ……赤魚……」
となるわけですが(笑)。
もし物語を知らない状態で普通に食べ、その後に映画館であの展開を観たらと思うと、SNSで言われているようにちょっと戦慄します。
映画館の中だけで作品を完結させず、コンビニの商品や企業コラボ、来場者特典まで含めて日常の中へ作品世界を広げている。
映画の内容だけでなく、ここまで巨大なコンテンツに成長した『ちいかわ』という作品そのものの強さも改めて感じました。

結局4回観ましたが、この映画について、
「セイレーンが悪い」とも、「ヒトハが悪い」
とも、簡単には言えませんでした。
相手にも原因がある。でも、それなら何をしてもいいわけではない。
仲間を守りたい。でも、そのために別の命を奪えば、新しい争いが始まる。
真実を明らかにすることは正しい。でも、その真実を明らかにすることで誰かを傷つけることもある。
だから、この映画について考えると最後はやっぱり、
「どうすればよかったんだろう」に戻ってきます。
誰が正しいのかを決める作品というより、なぜ争いが起こり、どうして止められなくなるのかを考える機会を与えてくれる作品だった。
少なくとも自分には、そう映りました。
原作で内容をある程度知っていたにもかかわらず、気づけば映画館へ4回。
かわいい。笑える。怖い。そして、かなり考えさせられる。
いろいろな意味で、とんでもない映画に出会ってしまいました。
ここまで『ちいかわ 人魚の島のひみつ』について散々語ってきましたが、ここからは柔道整復師らしく少し身体の話をします。
好きな映画を4回観たことに後悔はありません。
ただし、映画を4回観たということは、腰も4回分、映画館の座席に長時間座っていたということです。
映画館に限らず、デスクワーク、ゲーム、長距離運転、新幹線や飛行機での移動など、「特に激しい運動をしていないのに腰が痛い」という経験がある方は少なくないと思います。
そこで疑問になるのが、なぜ座っているだけなのに腰が痛くなるのか?ということです。
腰痛の話になると、「姿勢を良くしましょう」「背筋を伸ばしましょう」と言われがちです。
もちろん身体にとって楽な姿勢を探すことは大切ですが、映画を観る2時間近く、ずっと同じ姿勢を保ち続けることの方が問題になる場合があります。
どれだけ見た目の良い姿勢でも、その姿勢からほとんど動かなければ、腰背部や殿部など特定の組織には持続的な負荷が加わります。
反対に、少しくらい姿勢が崩れていても、ときどき座り直したり脚の位置を変えたりしていれば、負荷が一か所へ集中し続けることを避けやすくなります。
「正しい姿勢を固定する」より、「一つの姿勢に固定しない」こと。
映画館で腰を守るうえでは、この考え方が重要です。
映画館の椅子に長時間座っていると、上映開始直後と終了直前では座り方がかなり変わっていることがあります。
最初は背筋を伸ばしていても、時間が経つにつれて身体が座面の前方へずれ、骨盤が後ろへ傾き、腰椎も丸まった姿勢になりやすくなります。
この姿勢そのものが直ちに悪いわけではありません。ただし、その状態で長時間ほとんど動かないと、椎間板や腰背部の筋肉、靱帯などへ同じ方向の負荷が続きます。
長時間座ったあとに「腰が固まった」「立った瞬間に腰が伸びにくい」と感じるのは、このような長時間の姿勢保持も一つの要因になります。
日常的に腰痛を繰り返している方は、慢性腰痛について詳しく解説した記事もあわせてご覧ください。
映画を観ている間に動かなくなるのは腰だけではありません。
こうした普段何気なく行っている動作が、映画を観ている間は大幅に減ります。
そのため上映終了後に突然立ち上がると、「腰だけが動かない」「股関節が伸びない」「お尻から腰にかけて重い」と感じることがあります。
長時間座ったあとに腰が痛くなったからといって、すぐに腰椎椎間板ヘルニアを疑う必要はありません。
腰周囲の筋肉や筋膜に負担が蓄積して起こる筋膜性腰痛のように、画像検査では大きな異常が認められなくても腰に痛みや重だるさを感じるケースがあります。
一方で、腰痛に加えてお尻から脚へ広がる痛みやしびれ、感覚の違和感などが続く場合には、単なる「座り疲れ」だけで判断しないことも大切です。
腰椎椎間板ヘルニアでは、腰だけではなく神経への刺激によって臀部や脚に症状が現れることがあります。詳しいメカニズムについては腰椎椎間板ヘルニアの専門解説をご覧ください。
逆に、長時間座ることよりも「立つ・歩く」ことで症状が強くなり、椅子に座ったり前かがみになったりすると楽になる腰痛もあります。
例えば腰部脊柱管狭窄症では、一定時間歩くと脚の痛みやしびれが強くなり、休憩すると再び歩けるようになる「間欠性跛行」がみられることがあります。
つまり「腰が痛い」という一言でも、原因や身体の状態は同じではありません。歩くと脚がしびれる、前かがみになると楽になるといった特徴がある場合は、腰部脊柱管狭窄症の詳しい解説も参考にしてください。
では、映画を観るたびに腰痛を気にしなければならないのかというと、そんな必要はありません。
せっかく映画館へ行ったのですから、作品に集中したいところです。
そのうえで、次のような小さな工夫はできます。
特別な体操をするというより、長時間まったく同じ姿勢にならないことが基本です。
今回のような長時間座位による腰の重さと、スポーツ中に起こる腰痛は分けて考える必要があります。
特に成長期の選手が「腰を反ると痛い」「投球やスイングで痛い」「練習後だけ腰痛が続く」と訴えている場合、単なる筋肉疲労とは限りません。
成長期のスポーツ選手では、反る・ひねる動作を繰り返すことで腰椎分離症が起こることがあります。実際の競技復帰までの考え方については、中学生野球選手の腰椎分離症の治療事例でも詳しく紹介しています。
同じ「腰痛」でも、年齢、発生した場面、痛む動作、脚のしびれの有無などによって見るべきポイントは変わります。
痛みが強く続く、脚に力が入りにくい、しびれや感覚異常がある、成長期の選手で反った時の痛みが続くといった場合には、自己判断だけで済ませず、必要に応じて医療機関での評価も検討してください。
『ちいかわ 人魚の島のひみつ』は、結局4回観ました。
好きな映画であれば、何度観てもいいと思います。映画でもゲームでも旅行でも、好きなものを腰痛が怖いからと避けてしまう必要はありません。
ただ、映画を4回観れば、腰も4回分ちゃんと座っています(笑)。
大切なのは「座らないこと」ではなく、長時間ずっと同じ姿勢のままにしないこと。
好きなことを長く楽しむためにも、身体の状態に少しだけ目を向けてみてください。
そして次に『ちいかわ』の映画を観る機会があれば、自分もたぶんまた映画館へ行きます。
その時は、上映前にちょっと歩いてから座ろうと思います(笑)。
執筆者 柔道整復師 古田 幸大
