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「着圧ソックスを履くと疲れにくくなる?」
「ランニング中に履けば速く走れる?」
「筋肉痛や脚のむくみに効果はある?」
「飛行機ではエコノミークラス症候群の予防になる?」
スポーツショップやドラッグストアへ行くと、さまざまな着圧ソックスやコンプレッションウェアが販売されています。
「血流が良くなる」「疲労を軽減」「パフォーマンスをサポート」など魅力的な言葉が並びますが、実際の研究を見ると、期待できる効果と、期待し過ぎない方がいい効果はかなり分かれています。
こんにちは。愛知県東海市のARK接骨院、代表の古田です。
今回は着圧ソックスについて、スポーツでの使い方、筋肉痛や回復への効果、むくみ、圧力の選び方、さらに飛行機や長距離移動で問題になるエコノミークラス症候群(旅行関連VTE)まで整理していきます。
私はスポーツ用品を見る時、「なんとなく良さそう」ではなく、「それを使うことで実際に何が変わるのか」を分けて考えるようにしています。
着圧ソックスも同じです。
血流に何らかの変化が起こることと、速く走れることは別。翌日の脚が楽に感じることと、筋肉が完全に回復していることも別です。
ちなみに私は、中学生の頃から着圧ソックスを履いていました。
とはいっても、当時は血流や静脈還流、リカバリーなんてほとんど考えていません。
なんとなくスポーツ選手っぽくて、かっこよかったから。
それくらいの理由です。
そこから自分自身がスポーツに関わり続け、今では柔道整復師として選手の身体を見る立場になりました。
当然、昔のように「なんか良さそう」「かっこいいから」で道具を見ることは減って、実際に何が変わるのか、どこまで効果があるのか、逆に何を期待し過ぎてはいけないのかまで考えるようになりました。
なので今回は、昔から何となく身近だった着圧ソックスについて、現在分かっている研究とスポーツ現場での考え方を一度整理し「着圧は効く・効かない」の二択ではなく、「何には使えて、何には期待し過ぎない方がいいのか」という視点で解説します。
着圧ソックスは、脚へ一定の圧力を加えることで、静脈還流の補助や脚のむくみ、快適性などを目的として使用されるものです。
特に足首側の圧力を高くし、ふくらはぎ側へ向かうほど徐々に圧力を弱くする段階的な圧迫を採用した製品があります。
ただし最初に区別しておきたいのが、次の3つです。
これらはすべて同じものではありません。
特に深部静脈血栓症(DVT)などの予防について研究されているのは、単に「きつい靴下」ではなく、適切にサイズ調整された段階的弾性ストッキングです。
着圧ソックスの商品説明では「血行促進」という言葉をよく見かけます。
ただし、脚から心臓へ戻る静脈血の流れを補助することと、筋肉へ送り込まれる動脈血がいつでも大幅に増えることは別の話です。

2023年のメタ分析では、コンプレッションウェアによって末梢血流や静脈血流に小さな改善が認められました。一方、安静時の動脈血流については明確な改善が確認されていません。
ここはスポーツ用品の説明で、話が一気に飛びやすいところです。
「血流が良くなる」→「酸素がたくさん届く」→「疲れない」→「パフォーマンスが上がる」
こう並べると、なんとなく全部つながっているように見えます。
しかし実際には、一つの生理学的な変化が起きたからといって、そのまま競技能力が上がるとは限りません。
これは着圧ソックスに限らず、スポーツ用品やリカバリー用品を見る時にかなり大切な考え方です。
| 項目 | 現在の考え方 |
|---|---|
| 脚のむくみ | 軽減に役立つ可能性がある |
| 静脈還流 | 補助する可能性がある |
| 筋肉・軟部組織の振動 | 抑える可能性がある |
| 運動後の筋肉痛 | 軽減する可能性はあるが、確実性は高くない |
| 脚の重さ・回復感 | 楽に感じる人はいる |
| ランニングタイム | 明確な改善は確認されていない |
| 持久力 | 一貫した改善は確認されていない |
つまり着圧ソックスは、「履けば身体能力が上がる道具」というより、脚を快適に保つための補助装備として考える方が現在の研究には合っています。

スポーツをしている人なら、一番気になるのはここかもしれません。
結論として、着圧ソックスを履くだけでランニングタイムや持久力が明確に向上するとは言えません。
2025年に公表されたランニングを対象としたメタ分析では、51研究・899人を対象に検討した結果、レースタイムにも疲労困憊までの時間にも明確な改善は認められませんでした。
一方で、筋肉や軟部組織の振動を抑える効果は比較的一貫して確認されています。
着圧された感覚が好き、脚が安定しているように感じる、長時間動いた後の脚が楽に感じるといった人もいるでしょう。
なので、「これを履けば速くなる」ではなく、「これを履いた方が自分は快適に競技できるのか」を見る方が合理的です。
着圧ソックスやコンプレッションウェアについては、運動後の筋肉痛や主観的な回復感を多少改善する可能性も研究されています。
ただし、この分野の研究結果にはかなりばらつきがあります。
2026年に公表された持久系アスリートを対象とした系統的レビュー・メタ分析でも、約24時間後の筋肉痛は着圧側に有利な方向だったものの、対象となったのは9研究・158人で、研究の質やばらつきからエビデンスの確実性は非常に低いと評価されています。
つまり「翌日の脚が少し楽」ということは十分あり得ますが、そこから「筋肉そのものの修復が劇的に早くなった」とまでは言えません。
この考え方は、筋肉痛そのものを考える時にも同じです。
私はスポーツ選手を見る時に、「症状より機能を見る。ただし症状も無視しない」という考え方を大切にしています。

着圧ソックスを履いて脚が楽になったとしても、その後に走れるか、ジャンプできるか、切り返せるか、繰り返し動けるかまで回復しているとは限りません。
着圧は回復を判定する道具ではなく、回復を補助する選択肢の一つと考えるのがよいでしょう。
筋肉痛(DOMS)そのものの原因や、筋肉痛がある時に運動してよいのかについては、筋肉痛(DOMS)について詳しく解説した記事も参考にしてください。

ランニング、サッカー、バスケットボールなどで使用する場合には、筋肉の振動低減やフィット感、静脈還流の補助、脚の快適性などを目的として試すことができます。
ただし「これを履けば持久力が上がる」「スプリントが速くなる」という前提では使わない方がよいでしょう。
ランニングでは着圧ソックスの有無だけでなく、走行距離や練習頻度、身体が負荷へ適応できているかを見ることも重要です。ランナーに起こりやすい症状については、ランニング・マラソンで多い怪我で詳しく解説しています。
これは着圧ソックスに限った話ではありませんが、私は試合当日に初めて使う装備は基本的におすすめしません。
「大会だから少しでも良いことをしたい」と、新しいソックス、新しいインソール、新しいテーピングなどを急に追加したくなることがあります。
でも着圧ソックス一枚でも、圧迫感、皮膚の擦れ、熱のこもり方、シューズ内部のフィット感は変わります。
本番は「効果があるか試す場所」ではなく、「練習で確認できたものを使う場所」です。
着圧を使うのであれば、競技能力を直接上げる目的より、運動後の脚の重さ、むくみ、不快感を少し減らす補助として使う方が分かりやすいと思います。
ただし最適な圧力や最適な着用時間は、現在もはっきり決まっていません。
「長く履けば長く履くほど回復する」という単純なものでもありません。
スポーツ用品では、「強い」「硬い」「高い」「プロ仕様」という言葉が、なんとなく性能の高さに見えることがあります。
でも着圧に関しては、圧力が高ければ高いほど上位モデルという考え方ではありません。
必要な圧力を、必要な場所へ、適切なサイズでかける。
こちらの方がずっと重要です。
圧力は一般的にmmHgやhPaで表示され、1mmHgは約1.33hPaです。
| 足首部の圧力 | 実務上の考え方 |
|---|---|
| 15mmHg未満 | 比較的軽い圧迫。快適性重視 |
| 15~20mmHg程度 | 健康な成人がスポーツ用途で試す際の保守的な範囲 |
| 20~30mmHg | より強い圧迫。目的や身体状態の確認が重要 |
| 30mmHg超 | 医療的用途も多く、自己判断で強くしない |
特に疾患のない一般成人がスポーツ目的で初めて試すのであれば、足首部15~20mmHg程度から開始するのは一つの保守的な考え方です。
ただし、これは「15~20mmHgが競技能力を最大化する最適圧」と証明されているわけではありません。
スポーツ研究では製品ごとの実際の圧力、素材、測定部位、着用時間が統一されておらず、スポーツにおける唯一の最適圧は確立していません。
スポーツとは少し話が変わりますが、着圧ソックスを考えるなら知っておきたいのが旅行関連VTE、いわゆるエコノミークラス症候群です。
長時間同じ姿勢で座り続けることで下肢の静脈血流が滞り、深部静脈血栓症(DVT)を起こすことがあります。血栓が肺へ移動すると肺塞栓症(PE)につながることもあります。
この分野では、スポーツにおけるパフォーマンス向上よりも、適切にサイズ調整された弾性ストッキングについて比較的しっかりした研究があります。

2021年のCochraneレビューでは12試験・2,918人が検討され、ストッキングを使用した9試験では、無症候性DVTが非着用群47例に対して着用群3例でした。
これは着圧に関する研究の中では比較的強い結果です。
ただし、症候性DVT、肺塞栓、死亡については試験中にほとんど発生しなかったため、「着圧ソックスを履けばエコノミークラス症候群を完全に予防できる」とまでは言えません。
長距離移動で大切なのは、着圧だけに頼らないことです。
「着圧を履いているから10時間座りっぱなしでも大丈夫」ではありません。
水分補給も大切ですが、「大量に水を飲めば血栓を防げる」という直接的な根拠があるわけではありません。水分は歩行や足首運動の代わりではなく、あくまで補助です。
旅行関連VTEは、もともとリスク因子を持つ人で起こりやすくなります。
こうしたリスクが高い人では、長距離旅行前に医療機関で相談する価値があります。
ガイドラインでは、高リスクの長距離旅行者に対して膝下・足首15~30mmHg程度の適切にフィットした弾性ストッキングが選択肢として示されています。
着圧ソックスの記事で、ここは特に覚えておいてほしいところです。
このような症状が新しく出た場合は、「むくんだから着圧を強くしよう」ではなく、DVTなどを除外するための評価が先です。
さらに胸痛、突然の息切れ、血痰、失神などが加わった場合には肺塞栓症の可能性もあるため、緊急の医療評価が必要になります。
なお、診断されたDVTに対して専門家の管理下で圧迫療法を行うことはあります。
つまり「DVT=着圧は絶対禁止」でも、「DVTかもしれないから自分で着圧」でもありません。
疑い段階では診断が先。診断後の圧迫は治療チームが判断する。
これが一番分かりやすい考え方です。
一般的な健康状態の人が適切なサイズで使用する着圧ソックスは比較的安全ですが、誰でも強い着圧を使ってよいわけではありません。
このような場合には、特に高い圧力の製品を自己判断で追加せず、医療機関で確認してください。
特に上端を折り返したり、しわが入ったまま使用すると、一部分だけに強い圧力が集中します。
着用中に新しくしびれ、灼熱感、持続する強い痛み、足趾が白い・紫色になる、極端に冷たくなる、水疱や皮膚損傷などが出た場合には、「強く効いている」と考えず、一度脱いで状態を確認してください。
「普段26cmの靴だからMサイズ」という選び方だけでは、適切な着圧にならないことがあります。
膝下タイプなら、少なくとも次の部分を確認しましょう。
同じ靴のサイズでも、ふくらはぎの太さや脚の長さは人によってかなり違います。
またメーカーによってサイズ基準も違うため、メーカーAのMサイズとメーカーBのMサイズを同じものとは考えない方がよいでしょう。
「最大着圧」「強圧」といった商品名だけではなく、可能であればmmHgやhPaなどの圧力表示、足首周囲・ふくらはぎ周囲のサイズ表まで確認することをおすすめします。
「運動後に良いなら、一晩中履けばもっと回復するのでは?」と思うかもしれません。
しかし、長く履けば履くほど回復効果が高くなるとは証明されていません。
医療目的で処方された製品や、夜間使用を前提として設計された製品を除き、日中用の強いスポーツ用着圧ソックスを自己判断で一晩中履き続ける必要はありません。
特にしびれ、冷感、皮膚の変色などが出る場合は使用を中止しましょう。
ここまで研究を並べてきましたが、スポーツ現場での使い方は意外とシンプルです。
実際に履いて、自分にメリットがあるか確認すればいい。
例えば、ほぼ同じ内容の練習を何回か行って、着圧ソックスを履いた日と履かなかった日を比べます。
それで何度か試して「履いた方が明らかに脚が楽」という結果が再現するのであれば、その人にとっては使う価値があります。
逆に、何度比べても特に変わらないのであれば、「着圧ソックスは科学的に良いらしいから」と無理に必須装備にする必要もありません。
研究は平均的な傾向を教えてくれます。
でも実際のスポーツでは、最後に使うのはその選手本人です。
「みんな履いているから」ではなく、「自分にメリットが再現するから履く」。
私はそれくらいでいいと思っています。
そして、疲労が抜けない、同じ場所の痛みを何度も繰り返す、練習量を落としても症状が戻るという場合には、着圧用品だけで対応する問題ではないかもしれません。オーバーユース・オーバーワークについて解説した記事も参考にしてください。
また、着圧を使っていても膝やすねの痛みを繰り返す場合には、ソックスだけではなく練習負荷や身体機能そのものを見直す必要があります。ランナーに多いケガの原因と対策も参考にしてください。
現在の研究では、着圧ソックスによってランニングタイムや持久力が明確に改善するとは言えません。筋肉・軟部組織の振動低減や快適性などを目的として使う方が現実的です。
運動後の筋肉痛や主観的な回復感を多少改善する可能性はあります。ただしエビデンスの確実性は高くなく、筋肉そのものの回復を大幅に早めるとは言えません。
長時間履けば回復効果が高くなるとは証明されていません。医療目的で処方された製品や夜間使用を前提とした製品を除き、日中用のスポーツ製品を自己判断で一晩中強く圧迫する必要はありません。
VTEリスクが高い人の長距離旅行では、適切にサイズ調整された膝下の弾性ストッキングが選択肢になります。一方、健康でリスク因子がほとんどない人に、血栓予防目的で一律に必要とされているわけではありません。
急に片脚だけが腫れ、痛み、熱感、変色などがある場合にはDVTなどを除外する必要があります。「むくみだから」と市販の着圧ソックスで自己治療せず、まず医療機関で評価を受けてください。
特に疾患のない健康な成人であれば、足首部15~20mmHg程度から試すのは保守的な方法です。ただしスポーツにおける最適圧は確立していません。適切なサイズを選び、まず練習で試して、痛みやしびれなどがないことを確認してください。
着圧ソックスは万能なスポーツ用品ではありません。
静脈血流やむくみ、筋肉の振動、運動後の筋肉痛や脚の重さなどを補助できる可能性があります。
一方、履くだけで競技能力が大幅に上がる、疲労しなくなる、筋肉痛が必ず早く治るというものではありません。
スポーツで使うなら、適切なサイズと圧力を選び、まず練習で試す。そして自分にとって本当にメリットがあるのかを見る。
長距離移動で使う場合には、着圧だけに頼らず、歩行や足首運動も組み合わせる。
そして片脚だけの急な腫れや痛み、熱感、胸痛や息切れなどがある場合には、「とりあえず着圧」ではなく医療評価を優先する。
私はスポーツ用品について、「使うべきか、使わないべきか」を最初から決める必要はないと思っています。
適切なものを選んで実際に試す。
そして使った時に身体やパフォーマンスがどう変わったのかを見る。
良ければ使えばいい。変わらなければ必須ではない。
道具を信じるのではなく、道具を使った自分の変化を見る。
着圧ソックスも、それくらいの距離感で付き合うのがちょうどいいと思います。
執筆者 柔道整復師 古田 幸大
